【第2章】「不思議な出逢い」

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2005年、「美しき水を求めて」郡上八幡に訪ねてきた編集者がいた。トラベルカルチャー誌といわれた雑誌を作り続ける加藤直徳さんだった。

水と人が近い八幡城下町の風景は、『NEUTRAL』5号の上巻の中で、フランス、インド、ブラジル、ブルネイ、四万十川、牛島と旅してゆく中で触れられていた。水で、洗い、泳ぎ、踊り、防ぐ人たち・・・。それから加藤さんは、毎年のように郡上八幡に訪れて泊まった。「郡上八幡は本当によく眠れるんだよね。」吉田川の傍の定宿で、川の音を聞いて深い眠りに落ちたことからやみつきとなったという。

雑誌編集者としての加藤さんを最も有名にしたのは、続く季刊誌『TRANSIT』だろう。写真とエッセイによる紀行文だけではなく、フィールドごとの複雑に絡み合う歴史がヴィジュアル化され、土地固有の文化特集や図録が豊富であるという、叙情と叙事のダイアローグがそこには編まれていた。ただ現地を旅することでは気づけない視座の堆積は、雑誌の分厚さとなって現れている。

そんな雑誌作りの異才である加藤さんが『TRANSIT』をやめ、その後独立して2020年に出したのが『NEUTRAL COLORS』通称ニューカラーだ。オフセット印刷とデジタル孔版印刷機であるリソグラフを併用しながら、自分たちで刷り、もはや自分たちで売るという、初心の鬼のような雑誌作りを掲げてクラウドファンディングで発表された時、多くの読者が驚き、応援し、創刊を待ち望んだ。

初号の表紙、そして巻頭には「自分でつくると決めたインドの朝」。言わずと知れた南インドの出版社「タラブックス」の取材特集で、このタラブックスこそ、手漉きの紙にスクリーン印刷で刷り上げ、自分たちで製本するという、どこまでもDIYかつ世界で一番美しいといわれる絵本を世に送りだした人たちだった。

ニューカラーの創刊号の熱も冷めやらぬなか、翌年の2021年の夏、同じように吉田川の傍の定宿を出た加藤さんがふと見上げると、「スクリーン印刷発祥の地 郡上八幡」という看板が目に入った。加藤さんには、全てがシンクロして見えたはずだ。ここで何かができる、郡上と何かを生み出せるのではないかという直観である。

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