郡上八幡フィールドワーク

郡上藩江戸蔵屋敷 vol.8 レポート


ー 2日目 ー

< 虹を吐く!?朝一番に阿弥陀ケ瀧へ >

今回の宿泊場所は 郡上白鳥にある「Outdoor Style AMIDA」。町から一本道を外れ、峠道に差し掛かったところに位置しています。宿の名前は、ここから歩いていける「阿弥陀ケ瀧」に由来しています。
 
阿弥陀ケ瀧は、郡上の精神的核をなす白山信仰の拠点・白山中宮長滝寺の奥にあり、もともと「長滝」と呼ばれていました。16 世紀の僧道雅がこの長滝で修行をしていたところ、阿弥陀如来が感得され、阿弥陀ケ瀧という名前になったと伝えられています。つまり、大自然の魅力だけでなく、信仰や修験という側面からみても非常に大切なスポットなのです。

そんな大切な場所なら行かないわけにはいかまい!ということで、1日で一番心地の良い早朝に行くことにしました。自由参加にしていましたが、お見事、全員集合!期待値が高い。

滝までは宿から約15分。到着するや否や、歓声が上がります!見ると、滝壺に虹がかかっているではないですか!これには、郡上在住のスタッフも皆、ただただ感動するばかり。全員、岩に腰をおろし、静かで清い、貴重な朝の時間を堪能しました。

「虹を吐いて 夏よせつけず 瀧の音」(上田聴秋) の句のとおりに、虹を吐く幻の瀧

< 大解剖ツアー 後半 >

「大解剖ツアー」も2日目に突入。阿弥陀ケ瀧の神秘にすっかり癒された一同が、次に課せられたのは、郡上八幡城への登山でした。道中は、参加者同士でお話をしあったり、スタッフや講師陣への質問を投げかけたりと、1日目と比べてより一層、郡上への興味心が湧いているのを感じました。

郡上八幡城では街を一望しながら、武藤さんから郡上八幡の都市計画に関するレクチャーを受けました。郡上八幡が今のカタチに守られてきた秘訣とは?!観光で来ただけではとても知り得ない情報に、参加者からは唸り声を漏らすほどでした。

郡上八幡城では街を一望しながら、武藤さんから郡上八幡の都市計画に関するレクチャーを受けました。郡上八幡が今のカタチに守られてきた秘訣とは?!観光で来た話が盛り上がりすぎて時間が押し気味。急ぎ足で、「糸カフェ」に下ります。次は、またまた願ってもみないスペシャルな企画。郡上八幡お囃子クラブの、後藤さん、古池さん、筒井さんによる、郡上おどりのお話会です。

始まるや否や、三味線の音とともに生唄が披露されました。この展開に、感涙されている参加者も。郡上おどりの歴史を知り、唄の意味を紐解き、間近でお囃子に身を委ねる。様々な踊りがある日本の中でも、独自性を持った郡上おどり。その片鱗を知り、感じてもらえたのではないでしょうか。

糸カフェには昼食が用意されていました。2日目は、郡上八幡の母の味、「喜代竹」のお母さん・えっちゃんのお弁当です。地元の食材を使って丁寧に調理された、滋味深い味に、舌鼓。先ほどまでお話会を開いてくれた、お囃子クラブのお三方にもご一緒してもらい、さらに交流を深めていただきました。だけではとても知り得ない情報に、参加者からは唸り声を漏らすほどでした。

少し休憩を挟み、再び屋外へ。「郡上本染」に立ち寄り、いかに郡上の地場産業が「水」という資源に支えられているかについて、レクチャーを受けました。続いて向かった乙姫川では、「郡上サイダー」がサプライズで冷やされており、猛暑で噴出する身体の水分を補いました。

次に向かったのは、一般住宅?!郡上八幡ならではの、家庭に浸透している水文化に触れさせていただけるということで、「バーバーよし」を訪問しました。

< 水の町の起源は江戸に有り?水路カラクリ探訪! >

2日目の午後もいい時間に迫り、いよいよディープツアーも終盤に差し掛かりました。残る目玉は、郡上八幡旧庁舎記念館横にある観光スポットしても有名な「いがわこみち」。鯉や川魚が泳ぐ風情のある用水です。行政などの支援は一切受けず、これまで一貫して住民の自治によって維持管理がなされてきました。そんな、「いがわこみち」の生まれた背景や維持管理の仕方、訪れた危機などについて、住民の方に来ていただき勉強させていただきました。

ここを、ただ歩くだけではディープツアーになりません。今回は特別に、道路下に流れる用水入って探訪させてもらえることになりました。地面に潜り込むのですから、汚れることは覚悟せねばなりません。そんなことは問題でないと言わんばかりに、参加者は持参したビーチサンダルに履き替え、ズボンを太ももの位置までめくりあげます。「多分濡れるぞ、ほんまにええんか?」という武藤さんの呼びかけにも、みなさんが子どものような笑顔で応えていたのがとても印象的でした。

私たちが歩きやすように直前に水位が下げられていましたが、それでもやはり濡れずには歩けません。濡れないで進むことは早々に諦め、真っ暗な中を懐中電灯を照らしながら、「いがわこみち」を目指します。行き着いた先は、用水の途中にある「洗濯場」。かつてはここが、住民の社交の場にもなっていたそうです。水路をくぐり抜けた先で集まっている参加者の様子を見ていると、「かつて」という言葉が似合わないほど、その時に社交の場として姿が、今ここに蘇ってきているかのような錯覚を覚えました。

これにて、すべての行程が終了です。「水めぐり」をテーマにし、清水、滝、生業、水路、瀬木、踊りなど様々な側面から町を探訪する今回のツアーは、参加者の皆様にどう映ったのでしょうか?バスに乗り込む前に、2日間の感想を全員で共有しました。

その中で共感したのは、ツアーによって水を巡っていたはずが、結局問われたことは「いかに生きるか」ということ。ライフラインでもあり、産業の根幹でもあり、遊びのフィールドでもある水。誰にとっても身近であるこの資源について、あらゆる角度から勉強できたことは、多くの人たちにとって、大きな刺激を与えたようでした。

あまりに多くの場所をめぐったため、全てを紹介することができませんでしたが、郡上八幡のディープツアーに興味を持たれた方は、次回のディープツアーにきてください!現在予定は立っていませんが、我々も次のツアー企画を立てることを楽しみにしております。

最後になりますが、猛暑が少しでも和らぐようにと祈ってはおりましたが、蓋をあけてみると全国1、2位を競うアッツアツの2日間。それでも、誰一人として体調を崩すことなく、笑顔(と涙!?)で終えられたことが本当に良かったです。ご参加いただいた皆様、ツアーの催行に当たってご協力してくださった多くの皆様、ありがとうございました。

田中 佳奈

百穀レンズ フォトグラファー、ライター、デザイナー。 1988 年徳島生まれ、京都育ちの転勤族。大学で建築学を専攻中にアジア・アフリカ地域を訪ね、土着的な暮らしを実践することに関心を持つようになる。辿り着いたのが岐阜県郡上市。2015 年より同市内にある人口約250 人の石徹白(いとしろ)地区に移住し、暮らしやアウトドアをテーマにしたツアー開発や、情報発信を行う。在来種の石徹白びえの栽培にも生きがいを感じる日々。2018 年、独立。