【第1章】「はじめに」
郡上には、スクリーン印刷という戦後に育った地場産業がある。
「水と空気以外には何でも印刷できる」
という触れ込みだが、その現場を見ることはほとんどない。
ところが「タカラギャラリー」というスクリーン印刷体験のお店が2012年に郡上八幡に登場して、観光客が手ぬぐいなどに選んだ絵柄を刷って、自分だけのオリジナル手ぬぐいとして持ち帰ることができるようになったことで、そのシンプルな構造が一般に知られるようになった。
また、グラフィックデザイナーの高垣良平さんによって『郡上スクリーン印刷伝』が2020年にまとめられ、なぜ郡上が「スクリーン印刷産業発祥の地」と言われるのか、その歴史が簡単に分かるようになってきた。もちろん地場産業であるから、地元のグループが、Tシャツやユニフォームなどを揃える時、地域のスクリーン会社にプリントを頼むこともある話ではあった。
そして、2021年の夏、郡上藩江戸蔵屋敷メンバーが、とある不思議な出逢いによって、この知らないようで知っている、知ってるようで知らないスクリーン印刷について、真正面から取材することに決まった。
これからの投稿では、まずは、そのとある出逢いとは何だったのか。そして、そもそもスクリーン印刷とは何のか。さらには、郡上に20社以上存在するスクリーン印刷会社への取材記事を少しずつ紹介していく予定だ。その間には、取材の中で見出した郡上のスクリーン印刷の新たな可能性をカタチにするプロジェクトが待っている。
郡上だからこそなのか、郡上でなくてはならなかったのか。郡上のスクリーン印刷の歴史をひもときながら、私たちが出逢った新たな旅をドキュメントとして綴っていきたいと思う。